未来を失くした天使
〜 Lost Future Angel 〜

⇒ トップページ 生い立ち 事故あの日から 悲しい真実 裁判−判決 出来事(報道) 掲示板BBS 関連リンク集

愛也加(あやか)の最後は保育園のベッドでした。

幼くして未来を失くした、私の大切な天使…
乳幼児突然死症候群(SIDS)と窒息死(事故)の境界線…

その真実を解き明かすために闘った記録。

SIDSの現状と危険性

最近では、乳幼児の突然死を防止する対策として各メディア、関係機関、そして厚生労働省からも、「うつぶせ寝は危険」との発表がありました。しかし、この発表は遅すぎたのかもしれません。

遅れた原因として私が感じることは、数十年も前から「突然死」として、数えきれない程の大切な乳児の命がなくなっているにも関わらず、「SIDS」という除外診断が許されていたからだと思うのです。

平成8年には(年間)乳児の死亡の内、SIDSと診断されたものが全体の大多数を占めているのです。
果たして、この診断を完全に信じていいのでしょうか?

ここまで社会問題とされている状況にも関わらず、外因死(事故死)の可能性を完全に否定できない症例に対しても、
安易に「SIDS・乳幼児突然死症候群」とされている背景に、今の問題を大きくしてしまった、「責任者への過失」が関わっていると感じます。

乳児の死亡を「SIDS」としてしまうことで、全てが免罪となってしまうのです。

実際に、虐待による乳児の死亡や、うつぶせ寝による窒息死であっても、診察した医師が「SIDS」と診断することで責任者は過失を負わず、
後の調査で外因死(事故死)であったというケースが最近は多く見られるようになりました。

このような状況から助かったであろう、大切な命を摘み続ける結果となってしまったのではないでしょうか。

しかし、そんな今でも「内臓が強くなる」「よく眠る」などの理由で、うつぶせ寝を続ける保育園や医療機関があるようです。

でも、もう一度考えて下さい。万一、謳われているように、「内臓が強くなる・よく眠る」などの理由が正当なものであっても、それは大切な赤ちゃんの命を危険に晒しているのです。

あくまでも、除外診断である「SIDS」とは、それまでの健康状態および既往歴から、その死亡が予測できず死亡状況および剖検によっても、その死亡原因が不詳であった場合にだけ、つけられるものなのです。

「SIDS」とは過失を逃れる為に作られた診断名ではないという事を、強く訴えます。

右の写真は、警察の取調べで、
あお向けに寝せていた、布団は掛けていない
と証言していた担当保育士本人が、
両弁護士立会いのもと、
人形を使って愛也加発見時の状況を、
実際の保育園ベッドで再現したものです。

再現では、人形を、
うつぶせに寝かせ、布団を掛けました。
警察に証言した内容とは大きな違いがありました。
保育士本人による再現・発見時の状態(うつぶせ寝・布団掛け)

再鑑定結果報告書

SIDSは一般的に親の見ていない間、或いは睡眠中に死亡をしているのを発見されることが多いが、本件の場合うつ伏せ寝にした後、五分後には既に死亡状態(もしくはそれに近い状態)であり、この様に急激な経過をとる場合、うつ伏せ寝にしたことが急激に死を招いたと考えられ、通常この様な短時間で死亡することは外力による影響が強いと考えられる。

更に、近年のうつ伏せを避けることにより、乳幼児の突然死が減少していることは明らかで、うつ伏せ寝という外因的要素による影響があることはその死亡の原因として全く病的なものとは言えないと考えられる。

しかし、前途の如く、突然死した乳幼児の死因が総て鼻口腔の閉塞であるとも言い切れず、このことはやはり寝具の状況等を加味して考えるべきである。

以上の考察により結論として、『山根愛也加の死亡の原因は、鼻口腔閉塞による窒息死の可能性が高いと考える。』

予防策を機能させる

(1) 保護者の緊急連絡先を定期的に確認し、誰もが連絡できるように準備しておきます。
(2) 毎朝ていねいに子供を観察し、健康状態を把握します。
(3) 家庭での子供の様子・健康状態について保護者からよく聞いておきます。
(4) 職員間でその日の子供の健康状態を話し合い、確認します。
(5) 乳児が眠っている時はベッドのまわりの整理整頓を心がけ、常に誰かが観察します。
(6) うつぶせ寝はさせない様にします。寝返りに対する配慮も必要です。
(7) 入園間もない場合は子供の様子がつかみきれていないので特に気をつけます。
(8) 兄弟に突然死の例があったり本人にも過去に事故などがあったかどうか把握します。
(9) 「心肺蘇生法」について研修を計画的に行います。(できれば毎月)
(10) 職員全員が「SIDS」についての知識を持つようにします。

SIDSの発生を減らすには

SIDSを防ぐことは現在のところ非常に困難です。
しかし欧米諸国ではうつぶせ寝をやめるキャンペーンにより、大幅に発生率を減らすことが出来たように、SIDSの危険因子を育児環境から無くすことにより減少させることは出来るのです。
厚生省(現在、厚生労働省)も、これを裏付けるように1998年6月に独自の統計結果を発表し、「うつ伏せ寝」「妊娠中や赤ちゃんの周囲での喫煙」「人工栄養」の3項目について、SIDSの危険因子として啓発キャンペーンを始めました。

今回の発表以外にも「暖めすぎ」「感冒症状」「変化を見落としやすい環境」なども危険因子と言われています。
ただし、今回の厚生省(厚生労働省)の発表は、調査に協力した遺族や人工栄養に頼らざるを得ない母親への配慮が十分できていないなど、キャンペーンの仕方に批判的な意見もあります。
「危険因子=原因」 ではないことを十分に理解してもらいたいと思います。特に人工栄養については、人工栄養がSIDSを引き起こすのではなく、母乳に赤ちゃんの成長を助ける2つの要素があると考えられています。
1つは栄養バランスの良さと免疫効果、もう1つはアタッチメント(特定の少数の人との間に愛情の絆を形成すること)の形成です。

人工栄養で免疫物質は補えませんが、授乳のたびに赤ちゃんを胸に抱くなど、母乳育児と同様のスキンシップと愛情を注ぐことにより、アタッチメントが形成されれば人工栄養の場合の危険度は減少するはずです。

SIDSが認定されれば責任はないのか

乳幼児突然死症候群は、窒息、肺炎やその他の感染症、外因子を除外。
死亡原因の説明のつかないもの。
防御しえないから保育者側の過失は無いと判断されます。
しかし、逆にSIDSの名称は死因を特定することができないことを意味するにとどまり、直ちに免責されるものではないという見解もあります。
窒息事故など外因子の隠れ蓑となる可能性もあるからです。
例えば、満五ヶ月の乳児の症例では、死亡状況に不審な点があったが、解剖で窒息死と断定する重要な所見が発見されなかった為、当時SIDSと診断されました。
しかし母親は6年後に次子を身体的虐待で殺害し逮捕され、その自供から『長男が泣いてどうしようもないのでうつ伏せにして頭から厚手の布団を何枚もかぶせて外出し、帰宅したら死んでいた』 との真実が判明したのです。
法医学の分野においては解剖でも原因が明らかにされない、加害者の自白などで初めて真実が判明する窒息などの外因子例の存在することが以前から知られています。
疑わしい点はあるが、決定的な証拠がない。こういった場合に訴訟も起こりやすくなります。
真に、防ぐことが出来なかったと考えられるには、SIDSの定義の中でも述べられているように『死亡状況』により犯罪でないことが証明され、『解剖』により外因子でない事が証明されなくてはなりません。

過失があると思われる状況

【過去に裁判で問題になった事項】
(1) 劣悪な環境。
(2) 安全管理、監視の仕方に問題がある。
(3) 連絡義務が果たされていない。緊急時の手順や役割分担がされていない。
(4) 蘇生努力が適切に行われていない。蘇生法を修得した記録がない。
(5) 特に注意すべきことがないか確認していない。保母配置・園生活などについて十分な説明をしていない。
契約書など説明の際の記録がない。

【補足説明】
(1) 目配りのきく保母配置になっていたか。ベッド周辺に窒息事故の起こる恐れのある物は無かった。
(赤ちゃんは柔らかい布団や枕・ぬいぐるみに顔を埋めて窒息することがあります。
可動性のあるタオルは吐物が付着し窒息の恐れがあります。
ビニール袋・ひも類・硬貨・口に入るおもちゃにも注意します)
(2) 常に誰かが目を離さないようにします。記録があれば証拠になります。
(3) 発見者は、保護者・救急隊・園長などに迅速に連絡する義務があります。
(4) 保育者は救急隊が到着するまでは蘇生努力を続ける義務があります
(5) 保育者には個別に既往歴や健康状態について聞き、発育状況・特徴などに応じた保育をする義務があります。

保護委託契約関係

1998年6月の読売新聞によると、1979年以降、赤ちゃんと突然死をめぐり、病院や保育園を相手取って損害賠償訴訟は日本全国で30件近く起きていると報道されています。
特に1998年3月23日、東京地裁が4850万円の損害賠償を命じた事件は記憶に新しいと思います。
これらは施設が注意義務を怠ったり、劣悪な環境で保育したなど、保育園の管理責任について争われています。
小さな子どもは危険に対して、自分で自分の身を守ることができません。
こういった子どもを、親に代わって保護養育するのが保育園の役割です。
保護者と保育園は保護委託契約関係にあり、保育園は契約に基づき保育料を徴収するかわりに、子どもの安全を保障する義務が生じます。
けれども、すべてを保障することは実際には不可能です。
そこで入園に際して契約書を作りできることできないことがあることを知ってもらいます。
しかし契約書を作ったからと言って施設の責任を逃れられる訳ではありません。
契約書作成の目的は保護者に園生活と健康管理について意識を高めてもらうことです。
また、安全管理・健康管理のためには個別の対応が必要な場合もあります。
保育園は子どもを預かるにあたり、子どもの習慣・癖・寝かせ方などについて親から情報を収集し、それに従って子どもを扱うべき義務があります。
逆に保護者は子どもの健康状態を報告する責任があります。
何かへん?と思いながらも、疑問を軽視し突然死した例もあるのです。



以上は大阪府社会福祉協議会・保育部会調査研究委員会講師・大阪府監察医事務所監察医、河野朗久氏よりご協力をいただき、「SIDS(シズ)ってなあに(朝、元気に登園したはずの赤ちゃんが…)」資料集を参考にまとめています。

Copyright (C) 2003 - ∞ 未来を失くした天使〜Lost Future Angel〜 Rights Reserved